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砂糖の世界も複雑だった

 

波照間の純黒糖(かちわり)

光陰矢の如し、今年(2008年)の5月より『波照間の純黒糖』の販売を始めて半年が経ちます。

 

新商品の販売の際は、毎度同じなんですが、今回も販売にに先立つ数ヶ月前から、砂糖の勉強を開始したのであります。

 

すると、聞いた事がない言葉、そして、意外な事実が、次から次に出てくるではありませんか。

 

例えば・・・原料糖、糖分、蜜分、糖蜜、分蜜糖、含蜜糖なんて専門用語は初耳だった。意味が想像できるような言葉もありますが、実際に意味するところは、想像とまったく違ったりします。

 

そして『糖は甘いが、蜜は苦い』この体験が一番の驚きでした。

 

だって、素人が「糖」や「蜜」という漢字を見れば、どう考えても「甘いモノ」しか連想しないじゃないですか。でも、砂糖の世界の蜜(糖蜜)は、実際に舐めてみると苦いんですからビックリ。

 

てな訳でここから先、私が思わず『へぇー』と唸ってしまった砂糖の世界の話を書きますので、ご用とお急ぎのない時にでもお読みください。世間話のネタにでもしていただけば幸いです。

 

先ず、最初の疑問は原料糖って何?でした。

 

小学校の社会科で『サトウキビやテンサイは砂糖の原料になる』って習ったので、市販の砂糖に表示されている原材料名にはサトウキビまたはテンサイと書いてあるとばかり思っていたのですが・・・なぜか、我が家にあった三温糖のパッケージを見ると原料糖って書いてある。

 

三温糖が特別なのかと思い、近所のスーパーに確かめに行くと、なんと大半の砂糖は原材料名が原料糖となっているではありませんか。『波照間の純黒糖』の様にサトウキビが原材料名になっている黒糖も僅かながら売ってましたが、原料糖が原材料になっている黒砂糖も並んでいます。まさに、原料糖って何??? ここから砂糖の勉強がスタートしたのであります。

 

原料糖とは砂糖製造の原料として製糖工場が仕入れる砂糖の事。つまり、製糖工場では砂糖から製品としての砂糖(例えば、上白糖や三温糖)を作っているのです。

 

製糖工場の倉庫に保管されている『原料糖』

原料糖の作り方を簡単に説明すると・・・サトウキビやテンサイなどの原料作物を搾った汁を煮詰めて結晶化し、遠心分離器にかけて糖の結晶(糖分)と糖蜜(蜜分)に分けます(糖分や蜜分の説明は後ほどします)。そして、その結晶が原料糖です。

 

この原料糖を製糖工場が仕入れ、二次加工して砂糖製品を作るので、市販の砂糖の大半は原材料名に原料糖と表示されているのであります。ちなみに、原料糖から作られるのではなく、サトウキビやテンサイの搾汁から、直接、製品に加工される砂糖は製造量全体の20%以下、その中でも、煮詰めるだけで、糖と蜜を分離しないで製造される「波照間の純黒糖」の様な砂糖は本当に僅か、全体の0.5%以下です。

 

では、原料糖はどこで作られているでしょうか?

 

サトウキビやテンサイの産地で作られています。国内では鹿児島県(種子島、奄美諸島など)や沖縄県、北海道ですが、この国産の原料糖は日本で使われている原料糖の僅か10%、残りの90%はオーストラリア、タイ、南アフリカから輸入されています。ですから、日本で販売されている砂糖の約75%は外国産の原料から作られている計算になります。なお、原料作物からダイレクトに砂糖に加工された製品もあるので、この数字になります。

 

左が海外産の原料糖、右が国産の原料糖

砂糖の原料であるサトウキビやテンサイを搾った汁は、大まかに(1)糖分、(2)蜜分、(3)水分の3つの成分に分けることができます。糖分とはショ糖(僅かに還元糖も含まれる)のことで、砂糖の甘さの源です。蜜分はカルシウムやカリウム等のミネラルで、旨みやコクの源となります。

 

先ほど説明した原料糖の成分の多くは糖分ですが、まだ、蜜分も残っています。原料糖の約97%が糖分、約3%が蜜分ですから、原料糖そのものは茶褐色の結晶で、舐めると甘いですが、上白糖より甘さは控えめです。ちなみに、国産の原料糖の方が海外産の原料糖より色が淡くて、結晶も綺麗な感じがします。

 

これが『糖蜜』です

原料糖を作る際に出てくる糖蜜ですが、これは100%蜜分、褐色のドロッとしたシロップ状の液体です。見た目は黒蜜のようですが、舐めると苦い。糖は甘いが、蜜は苦いのであります。

 

さて次は、分蜜糖と含蜜糖の話です。

 

分蜜糖は精製糖とも呼ばれる砂糖で、原料糖を精製し、純度が高い糖分だけを結晶化した砂糖です。高純度の砂糖ですから、クセが無く、甘さが強い砂糖となります。上白糖、三温糖、グラニュー糖、ザラメ等々がこの分蜜糖になります。なお、テンサイから直に(原料糖を経ずに)分蜜糖(精製糖)に加工されるモノも相当量あります。

 

一方、含蜜糖は、その名が示すとおり、蜜分を残して仕上げた砂糖です。含蜜糖の代表格は沖縄の純黒糖。サトウキビの搾汁を煮詰めて作るだけなので、サトウキビの蜜分が、ほぼそのまま黒糖にとどまります。そして、その蜜分のお陰で、純黒糖は甘みの中にコクと旨みがある風味豊かな砂糖に仕上がるのです。ただ、舐めると苦い蜜分がそのまま含まれているので、時として塩気を感じるほどに強いコクがあり、香りも強いので、料理によっては不向きな場合もあります。

 

ここでやっと、今回(2008年10月)より取り扱いを開始する素焚糖の出番です。

 

素焚糖は原料糖から作るのですが、原料糖に含まれている蜜分を、ほぼそのまま残して作るので含蜜糖に分類されます。沖縄の純黒糖に含まれる蜜分は、総量の10%~15%ですが、素焚糖は約3%。蜜分が、ほどよく残っている素焚糖ですから、上白糖や三温糖に比べ、風味豊かな自然の甘さの砂糖に、そして、純黒糖に比べてクセのない優しい味の砂糖に、仕上がっています。また、サラサラした粉状の砂糖ですから、通常の砂糖と同様の手軽さでお使いいただけます。

 

大東製糖さんの社長様にお話を伺ったところ

 

『そのまま、すーっと食べられるほど美味しい砂糖を作る』

これをテーマに商品開発をすすめて出来上がったのが素焚糖です

 

との事。

 

 

素焚糖

素焚糖が目指したモノは優しい甘さ。上白糖などの精製糖は甘さが強すぎて、スプーン一杯の精製糖をそのまま食べるのは、つらいじゃないですか。

 

そこで、口に入れても、すーっとそのまま食べられるほどの優しい甘さを目標に、数ある原料糖の中から、徳之島のサトウキビから作られた原料糖を選定し、製造過程の工夫を重ね、実に3年の歳月をかけて出来上がった純国産の含蜜糖が素焚糖です。

 

塩辛いだけの精製塩より、海水を煮詰めて作った、甘みのある優しい味わいがする塩を使うと、ずっと美味しい料理になるように、優しい甘さの素焚糖なら、素材の味が引き立ち、ひと味もふた味も違うお料理に仕上がります。サトウキビの恵みをしっかり味わえる素焚糖、ぜひ一度、お使いください。

 

この文章に記載されている砂糖の生産量にかかわる数字は2008年に勉強した際に入手した数字です

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