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山が昆布を育てます パート2
・・・だから羅臼昆布は味が濃い
2000年の夏、函館の昆布問屋さんを訪ねたときに大旦那さんから『山が昆布を育てているんだ』と教えてもらいました(詳しくはこちらを参照ください)。実はこの時、頭の中ではこの生態系の話を理解をしたのですが・・・正直な話、山が昆布を育てているという実感はまるでありませんでした。
それから6年経った2006年8月、干貝柱の工場見学に枝幸(稚内からオホーツク沿岸を車で2時間ばかり南に下った所です)を訪れた私は、知床半島まで足を延ばしたのであります。羅臼町の中心部から海岸線を知床半島の先端に向けて車を走らせます。道路の左側はすぐ山、右側は海岸です。まさに山の隣に浜がある感じ。でも、昆布を干している風景には出会えません。とうとう、行き止まりになってしまった。
行き止まりから先は、車が通れないだけで浜はまだまだ続いています。山の斜面から海岸線まで、砂利が敷き詰められている浜の幅は20メートルもありません。10分ほど歩くと小屋が建っていた。
どうやら漁師さんの小屋のようですが、仕事をしている気配はない。さらに5分ほど歩くと、漁師さんの姿がやっと目に入ってきました。歳の頃なら60代後半のご夫婦が、海から獲ったばかりの羅臼昆布を浜に広げていたのであります。
漁師さんに今シーズンの漁模様を訊ねると『今年の天然物は全然ダメで、去年の半分も獲れてないの・・・一等になる昆布なんか殆どないですよ』と答えが返ってきました。
せっかくなんで色々と話を聞いたのですが、その漁師さん、普段は羅臼の街中に住んでいて、昆布漁のシーズンだけ、この車も入れない浜までやってきて仕事をするのだそうです。
以前は、道路の脇にある浜でも昆布が沢山獲れたようですが、やはり、近くで車が行き来きするだけで、海が汚れるのでしょうか、年々、獲れないそうです。車が入れない、つまり、自然の状態に近い浜の方に昆布が繁茂しているとの事。
話を聞きながら、あらためて周りを見渡すと、木が生い茂っている山から海岸線まで20メートル足らず。ここなら、漁師さんが仕事をしている夏を除けば、生活排水も海に流れ出ません。まさに山が昆布を育てているのであります。
翌日、遊覧船に乗って知床半島の先端まで行きました。海から見える風景は切り立った山と幅の狭い浜だけ。野原が広がっているのは、半島の先端部分だけだった。
さすがは世界遺産、知床半島の半分は、全く開発されていない自然のままの状態でした。これなら山から大量の腐葉土が海に流れ込み、海が豊富な栄養を蓄えるに違いありません。だから、羅臼昆布はあんなに味が濃いのだと、遊覧船の上からしみじみと感じたのであります。
『せっかく来たんだから、旨い物を食べさせてあげるよ。でも内緒だからね』と、羅臼の浜で会った漁師さん、こっそりウニをご馳走してくれました。石で叩いて殻を割り、中身を取り出し海水で洗って食べるんですが、このウニの味が濃いーの濃くないの・・・山はウニも育てています。
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