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紀州のヒジキにゃコシがある

 

平成23年4月、和歌山県は田辺市にある梅干メーカーさんを訪ねました。

目的は、梅干の仕入。現在、弊店が販売している「梅と塩だけでつくった梅干」を卸していただくにあたり、梅干の美味しさの秘密を聞いたり、工場を見せていただいたり、商品の仕様、価格、発注方法等の具体的な打ち合わせをいたしました。

 

和歌山県串本町、姫の海岸では、良質なヒジキが育ちます。画像の連なる岩は串本の名所「橋杭岩」。姫の海岸は、橋杭岩の向こう側左手にあります。

実は、その梅干屋さん、梅干以外の紀州の美味しい食材も、多々、扱ってらっしゃいます。

打ち合わせ終了後、そんな紀州の食材を紹介していただいたのですが、中でも「姫ひじき」に目がとまりました。

というのも、前々から、「真っ当なヒジキ」を扱いたいと思っていたからです。

 

「磯焼け」という言葉をご存じですか?

「磯焼け」とは、海岸に生えているコンブやワカメ、ヒジキなどの
海藻が減少して不毛の状態となり、

代わりにサンゴモと呼ばれる硬い殻のような海藻が、
海底の岩の表面を覆いつくす状態です。

ヒジキは、房総半島、伊勢志摩、紀伊半島、四国、九州地区に
広く生息しておりまして

その昔、ヒジキと言えば国産が当たり前がだったのですが・・・

「磯焼け」が原因なのでしょう。

近年、国産のヒジキが、本当に少なくなってしまった。

長崎県の対馬で、太くて長いヒジキが獲れると聞き、
仕入れるべく八方手を尽くしたのですが、

「売るほど数量が獲れない」との事で、仕入を断念した
半年後に「姫ひじき」と出会ったのです。

 

一口食べて、姫ひじきの食感に驚いたのであります

東京に戻ると、すぐに試食。カミさんに煮物を作ってもらい、一口食べると「コシがあって旨い」のですよ。

コシがあるヒジキなんて生まれて初めてだった。

そこで、他産地の国産ヒジキも取り寄せ試食をしたのですが、コシがあるヒジキは皆無。

てな訳で、いつの日か「姫ひじき」を弊店で販売することを心に決めたのであります。

 

ちなみに、「固い」と「コシがある」は違います。

例えばうどん。噛んだ瞬間から、噛み切るまで固い蕎麦は、単に「固いだけのうどん」。
「コシがある」とは言いません。

噛んだ瞬間は柔らかいけど、噛むに従い、もっちりとした弾力が増し、歯ごたえを感じるうどん、
これが 「コシがあるうどん」です

「姫ひじき」も同様、噛んだ瞬間は柔らかいけど、
噛み進めると歯ごたえ、つまりコシを感じるのであります。

 

姫の海岸では、毎年、3月から5月にかけてヒジキの刈り取りをします

出会ってから3年たった今年の5月、和歌山県串本を訪れ、ヒジキの刈り取りを見学してきました。

生まれて初めて見る海中のヒジキ、なんと黒くはなく、緑がかった茶色、そんな色だった。

刈り取ったヒジキは、とりあえず天日で干します。この時の色は、茶色と黒の中間。

 

鉄釜で5~6時間かけて、煮上げ蒸らします

後日、じっくり鉄釜で煮上げ、4時間程度蒸らしてから、天日で干す。

そして、ヒジキが真っ黒になったら干し上がり。やっと乾燥ヒジキの完成です。

 

半日、天日で干すと、真っ黒になり出来上がり

串本には2回行きまして、5月初めの刈り取り、そして、7月の終わりに、鉄釜で煮上げてから天日で干して乾燥ヒジキに仕上げる様子、を見学。

もちろん「柔らかいのにコシがある姫ひじき」の秘密を、しっかりと聞いて参りました。

 

その秘密とは・・・

 

姫の海岸は熊野灘に面していますが、海は穏やかです
1.

熊野の山から腐葉土が古座川を通って流れ込み、ヒジキにとって栄養豊富な海になる。

2.

姫の海岸は紀伊大島と橋杭岩に挟まれているので、海は穏やか。そして、栄養分も流失しにくい。

 

3.

ヒジキの刈り取り後、ヒジキが生育している岩場を徹底的に掃除し、翌年に向けて、育ちやすい環境を整えている。

 

春に、成長したヒジキを刈り上げます
4.

そんな理想的な環境で育つので、姫のヒジキは生育状況は抜群(人間の背丈ほど長くなるほど)である。

 

重しをのせた蓋が持ち上がったらヒジキの炊き上がり
5.

鉄鍋と薪で茹で上げた後、じっくり蒸らしてから天日乾燥という昔ながらの製法を守っている。

 

 

だから、姫ひじきは「柔らかいけどコシがある」

類い希な旨いヒジキに仕上がるのです。

 

 

姫ひじき

とは書いたものの・・・

「柔らかいけどコシがある」

読んだだけでは想像しにくいかもしれません。

 

百聞は一食に如かず。

ぜひ一度、「柔らかいけどコシがある姫ひじき」をご賞味ください。

よろしくお願い申し上げます。

 

 

 

築地仲卸 伏高 三代目店主 中野 克彦

 

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