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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2010 19

上京してきた妹に、お台場のヴィーナスフォートに案内してと言われ、余り乗り気はしなかった。なぜなら、二ヶ月前、ウォーキングの途中で、ヴィーナスフォートアウトレットのオープン初日に遭遇した。最後尾の札を揚げるガードマンが遙か彼方に見える長蛇の列に恐れをなしたからだ。

 

ゆりかもめの青海駅で下車。すぐ眼の前がヴィーナスフォートだ。その三階がアウトレットだった。レディースの店が多い。客も女性が圧倒的。平日なのか心配していた程の混雑もない。田舎でファッションビルを経営する妹は慣れた手つきで物色する。渋谷の109にありそうなギャルブランドはパス。

 

ある店で何やら店員と交渉していたが、出てくるなり外で待っていた私に「アウトレット専用品を売っとるだあぜ」。ぴったりサイズがなかったが、店員がいついつには納品されると答えたらしい。シーズン遅れの品やキズ物を廉価販売するのがアウトレットなのに、専用品を作っているというのだ。牛肉の切り落としとか切れ明太子をわざわざ造っているのだと私は理解した。

 

実は妹がここへ敵情視察に来たのは、鳥取の店の御得意様がはるばる兵庫県の神戸三田アウトレットまで洋服を買いに行ったと知ったからだ。アウトレット憎し。常連客の好みそうなメーカーの展示会に、度々、上京して買い付けた商品、品揃えの甲斐もなく、もっと安い店に向かう。そんな嫌な御時世に、気力も失せ、店を畳んでテナントの家賃でのんびり暮らしたいと愚痴る。安い店一途の私には耳の痛い話。

 

二階のフロアに下りコスメの店へ。鼻をつく香水の匂いに耐えきれず外のベンチで待つ。出入りする客のほとんどが亜細亜系の女性。日本人を尻目に買う気ムンムン。銀聯カード片手に、これでもかとがっつりまとめ買い。三十分待って、ルージュ一本買って出てきた。三人の買い物はこれだけ。

 

再びゆりかもめに乗り新橋へ。コリドー街で見知らぬ和食店に。おでんがここの主力メニューだった。おでん五品盛りの大根の上に添えられていたとろろ昆布がおいしかった。昔よく、とろろ昆布とかつお節をお椀に入れて湯を注ぎ、醤油をちょいとたらして飲んだ。結構な一品になったっけと皆で思い出して笑った。

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