鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2008 23

先日、伏高のお客様が店を閉められるというので、最終日に伺った。日比谷線の中目黒で東横線に乗り換え、二駅目の学芸大学で降り立った。駅からすぐ、というより、東横線のガード下、一階が東急ストア、その二階の名店街に店はある。ここ東横線の耐震補強工事の為に弊店となったのだ。

 

最終日とその前日は五千円の食べ放題、飲み放題の感謝デーという事で、常連さんで混雑が予想されたが、御主人の是非にというお言葉に甘えて伺った。久し振りの訪問だったが、店の造作も、おかっぱ髪のマサ子さんも昔のままで、笑顔で迎えてもらった。この店で三十四年間、黒ネコが伏高に入社する遥か前から、独立前の新宿の修業時代を含めると四十年以上も伏高のお客様でした。本当にご苦労様でした。感謝の気持ちで一杯です。

 

夕方六時を過ぎた頃にお店に着くと、カウンターに数名、座敷に三組ほどのお客さんがすでに盛り上がっていた。長らくのご無沙汰で顔見知りもなく、一人持てあます黒ネコを気遣って、マサ子さんがシモネタ攻撃で笑わせます。御主人は黙々と手際よく料理を仕上げ、指示しています。その間も続々と来客が続き、ほぼ満席となる。その間も電話が鳴りっぱなし。

 

「今、『はやて』に乗ったから」と岩手在住の元常連さんからの伝言に、「〇〇ちゃん来るの!!」と、あちこちから歓声が上がります。その一方で、カウンターのキャリアウーマン風の女性が隣の中年男性に絡んでます。「ここがなくなったらどうするんだ、のたれ死にするか」ここは女性陣の天下らしい。御年六十七歳という御主人は、その日常茶飯事的いさかいを優しく見守っている。こんなにぎやかな毎夜が突然なくなると、ちょっと寂しくなるのではと心配になる。

 

居心地が良すぎて長居しすぎた。お勘定を終えて「じゃ、また」と言いそうになって言葉を飲み込んだ。「また来ます」はもうないのだ。店を出て、寂しさが一層深まった。時々は築地に元気な顔を見せに来て下さい。その時には、そっと競馬の穴情報を教えてください。名人でしたから。

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