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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2007 19

毎年、暮れになると、お久し振りというお客様が次から次に築地の店にいらっしゃいます。『商売、やめちまったんだ』と奥さん同伴でお見えになる方や、店を継いだ息子さんと仲良く連れ立っていらっしゃる方とか、『築地には来たかったんだけど、なにしろ・・・』と面の痩せ細った方や、『以前は主人が買いにきていたんですけど、私独りになったもんで・・・でも、やっぱり年の暮れには、築地に足が向いちゃうのよね。』と杖を片手の老婦人とか。年々歳々、築地の暮れは相似たりとはいえ、人の風景は確実に変わっていきます。

 

「おせち」離れが進んでいると耳にしますが、一方で「おせち」というと握り拳に力が入る方もまだまだ大勢いらっしゃいます。『クリスマスのローストチキンとは訳が違うんだ。年に一度くらい、日本料理を手抜きせずに、子供の口に合わせる必要もなく、これが日本料理だと経験させるんだ。』と,意気込んで、築地におせちの食材を買い求めにいらっしゃる方の多くは、六年後の市場の移転が心配だと口にされます。

 

『その頃には、もうこの世にはいないから、いいや』の冗談い笑ったものの、内心は不安です。年の瀬のにぎわいは、六年後には消えるのかと。上野のアメ横化するのか、元築地市場跡と書かれた石碑がぽつんと立つだけなのか、皆目、見当がつきません。

 

ところで、今年も実家に帰省しました。去年の七月に母が亡くなり、父一人暮らすひっそりとした家で、静かな正月となりました。喪中につき、正月飾りも、初詣も、新年の挨拶もなく、つつましい肴をつまみながら、故人を偲んで、昔話に花を咲かせています。仏壇には母の遺影が。お葬式の時、遺影の写真が年より老けてみえると不評だったのですが、その写真も、より若々しい写真に取り換えられて、こちらに微笑んでいます。

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