鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2019 24

世間様は十連休の黄金週間へ突入。築地の休みは、飛び飛びの計五日休み。平成から令和へと元号が変更された。三十年前の正月休み、海外旅行から帰国した時、成田空港でテレビ中継の画面に、平成と文字が書かれた台紙を抱く小渕首相の姿があった。あれから三十年も経ったのか。長い様で、あっという間だった気もする。  

平成最後の先月末で、築地伏高のお隣の伊勢龍さんが店仕舞いした。浅草駒形から移ってきて六十七年経ったそうだ。五月からは在庫処分で細々と店を開けてるとか。

ところで私は、入院、身内の不幸と続き、ゆっくり街歩きもままならず、ストレスで身体のあちこちが悲鳴を上げる。気分転換と、上野へ。東京国立博物館で「国宝 東寺空海と仏像曼荼羅」特別展を見る。東寺は千二百年前、平安京遷都に伴って王城鎮護の官寺として西寺とともに、平安京の正門、羅生門の東西に建立。唐で新しい仏教である密教を学んで帰国した弘法大師空海が嵯峨天皇より東寺を賜り、真言密教の根本道場とした。毎月21日の御陰供(みえく)の日、五重塔のそびえる東寺の境内で骨董市(弘法市)が立つ。一日二十万人の人出らしい。

ところで「東寺」展、まずは「後七日御修法(ごしちにちみしほ)」本邦初公開。千二百年前から、毎年、一月八日から七日間、宮中の言言院で行われていた儀式。向かい合わせになった胎蔵界、金剛界の二つの大曼荼羅図それぞれの前に大檀が築かれ、周囲に法会の場を守護する「五大尊像」と「十二点像」を掛け渡した儀式の現場が再現さている。密教の密は秘密の密なのか、ただならぬ空間異界に踏み込んだ様。なにやら妖しい。撰ばれた僧だけしか入れない締め切ったお堂で、千二百年前、空海が使った仏具を手に、全身全霊で祈る姿が目に浮かぶ。弘法大師蔵、損傷がかなり進み判別不能。ほとんどの絵画が痛ましい姿。天下三筆の一人空海の直筆も、書の門外漢である黒ネコには猫に小判。

この特別展の目玉である立体曼荼羅のコーナーヘ急ぐ。大ホールに燦然と輝く仏像群。東寺講堂から二十一体の仏像のうち、史上最多の十五体が東博へ。国宝十一体は全方位、360度から見られる様に展示。立体的彫像から構成された曼荼羅は、感情移入が楽なのだ。とりわけ、甲冑を身につけ象に乗る「帝釈天騎象像」がひときわ際立つ。そのりんとした顔がシュッとしてダーなのだ。この象だけが今度で唯一、写真撮影OKなのだ。フラッシュはダメだが、それでも写そうとスマホを手にした人たちに取り巻かれていた。この尊像のフィギュアが売られていたが、金七千二百円に怖じ気づき買いそびれる。

博物館の売店で「たん熊北店」の弁当と太巻きを買い、特別公開されてた東博の裏庭でいただく。太巻き食べてたうちのやつ。「これ食べて」と一口だけ食べた。葉桜が目にまぶしい。

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