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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2017 25

築地はなにやら夏枯れで、売上げジリ貧状態。元気なのは、串刺しの玉子焼き、アイスクリームのお店なのでは。もちろんそれを買う外国人観光客も超元気。  

先日、隣の店のやっちゃんが、黒ネコを呼ぶ。「ほら見てみろ、でかい蜂の巣が伏高の二階のひさしの隅にあるぞ!!」。そんな大きな巣とは思わなかったが、確かにそれらしきお椀形の物が。この前、一匹の大きな蜂が店内に入ってきて、うちのお姉さんパニック状態。中央区役所に電話。「蜂の巣があるんですけど」、「はい環境衛生局につなぎます」、「指定業者につなぎます」、「住所と電話番号、黒ネコの名前を」、「本日昼一時十五分に伺います」。

やってきました。防護服などない、普通のいでたち。冗談ばかり言うおじさん。大丈夫かいなと思ったが。建物手前のアーケードにたたんだ脚立を拡げてかける。ちょっと太ったおじさん、「しっかり脚立をおさえて」と登っていく。尻のポケットに白い殺虫剤のカンだけ。 殺虫剤を二、三十秒ほど吹き付ける。軍手で巣を叩き落とすと、カラコロと地上に落ちてきた。縦横十センチに満たない巣。蜂の死骸も「これ業務用の殺虫剤だから強力なの。心配ないよ全部死んでる」とニッコリ。「アーケードに散らばった蜂も拾っといたから」。手慣れた様子で脚立をたたみ車につむ。「じゃ」と。そうなんです、中央区に駆除を頼めば無料なんです。民間に頼めば一万円近く。助かります。

先月最後の土曜日は、浅草の花火大会だった。花火にちっとも興味のない黒ネコは、当日の朝知った。隣の伊勢龍の由香姉のねいちゃん、早朝買い出しに来た。「えらく早いね、どうしたの?」、「花火大会なの、今夜は予約で満員御礼なのよ」、「えっ花火!!」、「えっじゃないわよ!!」。「鱧、鱧がないのよ!! 大仲のにいちゃんに仲卸を色々探させたのに、ないのよ。淡路島の鱧じゃないと念を押してるんだけど、丸一匹はあるんだって」と由香。「骨切りなんか出来ねぇっうの、素人には」。やがて、築地魚河岸の大仲の若い衆が飛んで来て、「骨切り出来るヤツを見つけました。まかしといてください」。姉御肌の由香に平身低頭。すごみありまっせ。

「稼がせてもらうで、今夜は」と美香ねぇ。ちょっと聞いて、「隅田川河べりの『麦とろ本店』、税、サービス、飲み放題込みで四万五千円だってよ!! 鰻の前川だって五万円なのに。『麦飯ととろろの料理』よ!! ぶったまげるわよ!! うちもそんな商売したいわ」と興奮冷めやらぬ。またまた由香、茶袋持って「松茸仕入れてきたわ、ちょっと乾いてるけど、たっぷりの松茸。松茸ごはんと鱧鍋ってか。こりゃ豪華なレシピだなや」。

浅草の店がどうだったと聞くと、あの雨だもの、見知らぬ人達がダダダと次々に来店。立ってもいいからと言う客を断るのにうんざり。花火大会もう嫌い!!

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