鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2010 18

先月中旬、市場の水曜休み、思い立って亀戸天神の藤祭りに出掛けたが境内に入ってがっくり。遅かりし由良之助、藤は盛りを過ぎ、大変は池の中で水中花となっていた。気を取り直して、浅草で鰻でもいただくかと歩き始める。

 

四ツ目通りを北に折れて歩き始めるや。突如、前方に塔が出現。「アッ、アレハナンダ!!」東京スカイツリーだった。自宅近くの晴海大橋の中程から、遠く傾いた様に見えるスカイツリーは見たが、仰ぎ見るアングルはドキッとさせる。押上に近づくにつれ、どんどん高く、どんどん太くなっていく。自ずと歩みも速まる。

 

見学者が押し寄せているとの報道に、建設中の塔をわざわざ見学とは御苦労なことだと内心、小馬鹿にしていたのだが、実際、こうも巨大な塔だとは。鳥肌が立つとはこの事か。押上駅前の広場には人集り。皆一様にカメラを空に向けている。ツリーの全景を納めるのは無理だろう。

 

駅前の浅草通りを西に折れ、しばらくして道を渡り、ツリーの真下に。堀川を挟んで向こうが工事現場。ツリーの足元は三角形ながら、上に昇るにつれ円形に変化していく。どでかい白いパイプが網の目に絡み合い、一本の木の様に空に向かって延びる。足元に表示された看板の数字は、すでに東京タワー333メートルを超えていた。来年十二月完成予定の高さは634メートルだから、更に倍近くまで延びることになる。

 

真下から見上げると、途方もない、いや無謀とさえ思えてくる。味も素っ気ない、ただただ高いだけの鉄塔と思っていた黒ネコも、実物を見上げ、何やら生き物におもえてくるこの存在感に圧倒される。しばらく呆然と立ち尽くす。期せずして出会った奇観に満足して浅草に向かう。

 

どちらかというと時代の波に取り残された押上の町並みも、スカイツリーの出現で様変わりするだろう。言わんや浅草は。浅草は訪ねる度に増々若者の姿が目立つ。往年の東京一の繁華街の活気を取り戻しつつある。

 

下町大好きな私には喜ばしい限りだ。欲を言えば、中央区民として皇居天守台跡に、江戸城天守閣を再建してもらえば、最高なのだが。

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