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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2008 12 19

築地波除神社の鳥居の両脇にそそり立つ銀杏の大木が黄金色に染め上がった。その大銀杏の落葉を空中に舞い散らす北風に身はすくみ、先ずは帰宅して、炬燵に足を投げ出し、お燗で一杯といきたいところだが、我家では、フローリングの床に似合わないと、おこたは御法度ですし、お燗もありません。このところ、余り日本酒が進まなくなり、もっぱら、赤ワインばかり飲んでます。

 

夕食にワインと言うと、まずは失笑されます。「柄にもないのは判っているよ」と言いたい気持ちを抑えて、「赤ワインのポルフェノールが活性酵素を消してくれるそうだ」と、自分でも信じてもいない癖に、言い訳をしている。常飲し始めた当初は、千円前後のボトルワインでしたが、今では大容量の紙パックワインとなりました。ほとんど毎日となると、小遣い銭が残りません。焼酎党が行きつく所『ペットボトル大五郎』となる様なものです。

 

先月、ボジョレーヌーボーが解禁となりましたが、高嶺の花です。円高だというのに、仕入れ時が円安だったそうで、ちっとも安くなってません。値が張る品が必ずしも旨いとは決して思いませんが、一度だけ旨いワインを頂いた事が。

 

十年ほど前、ロマネ・コンティではなく、その畑の隣りのブドウ畑で穫れた赤ワインだと聴きました。ズブの素人の私でさえ、打っ魂消る旨さ。ソムリエなら「絹の様な口当たり、深遠の極みといわれる複雑な香味」とでも表現するであろう絶妙な味、ただ、ただ感動。ほんの数メートル隣りという、畑の違いで、値段はロマネ・コンティの数十分の一という友人の言葉に、慌てて銀座の明治屋へ走った。ありました、金、八千円也。

 

ところが所詮は藤四郎、ワインはワインセラーに入れて保存するか、直ちに飲むのが鉄則なのに、何か特別の日にと放って置いた。そして半年近く経って、その特別な日に、コルクを抜き、グラスに注ぎ、口にしたとたん、吐き出した。酸っぱい。至福の時が一転して悲劇に。無知とみみっちさに我身を呪った。高いワインには懲りた。分不相応を思い知った。

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