鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2006 21

先日の昼飯時、築地の店先に、老夫婦が立ち寄られて、ウチの松ちゃんとなにやらお話してました。 奥に居た私の耳に『鰹節を毎日食べると脳梗塞にいいんですよね?』との旦那さんの声が聴こえてきました。私は思い当たりました。 実は前日の昼のテレビ番組「昼は○○、思いっきりテレビ」で鰹節の特集を放送したんです。

 

その番組をダビングしてもらいながら、まだ見てなかったのですが、 きっとその番組を見ていらっしゃったんだと確信して『昨日の思いっきりテレビを見たんですか?』 と老夫婦にきくと、二人とも頷かれました。 私、自慢げに『あの番組で使った本節、荒節、花かつおはウチの商品なんですよ』。 老夫婦はエッと驚き、嬉しそうに『そうだったんですか』。

 

私『お貸しした削り器はまだ返ってきてないんですけど』と増々自慢する。 お調子者の私、図に乗って、旦那さんが手にぶら下げた他店のビニール袋の中に買ったばかりの 削り器を発見するや、『その削り器、調整しましょう』と取り上げ、 『新品の削り器は調整されてないのが多いんで』と早速削ってみる。 呆気にとられる老夫婦を尻目にどんどん削る。 鰹節削り初心者のお二人になんとか納得してもらえた。喜んでもらって大満足。

 

それにしてもお二人は真剣そのものだった。旦那さん『実は家内が脳梗塞で倒れたんです』私、驚きました。 どうみても奥さんは健康体に見える。旦那さん『CTスキャンで脳の半分は真っ白なのに、 何故か重い障害にならず、お医者さんも目を白黒させてましたよ。 だからって心配なもんだから、鰹節、食べさせてやりたくて』。

 

家に帰って録画を見ました。大学の先生がラットの脳の二枚の切断面を指して 『この脳梗塞をおこした真っ白な右半分が、鰹節を食べさせて、ここまで改善したんです。』 ホント真っ赤に変色していた。老夫婦にはまさに天からの声だったと思います。

 

店からゆっくり去っていかれる奥さんは、それでもどちらかの足をかばっている様子でした。 でもその傍らには、気遣う旦那さんがぴったりついています。 いい映画を見た後のような幸福な気分です。 奥さんに一日も早く鰹節の効果があらわれるのを祈りつつ

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