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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2005 11 18

今日は土曜日。一般の観光客が多くなる日だ。朝から連れ立って場内に向かう。 昼近くになると上着に同色のリボンやシールをつけた観光団一行も通り過ぎる。 場内から、赤ら顔の酒を聞こし召した人達も帰ってくる。このごろは女性も平気で真っ赤っかである。


そこへ常連さんが支払いに見えた。

お客様『まあ、場内は人だらけ、
    とくに寿司屋の前は、びっしり人の列。本当、感心するわ。』

私  『平日もそうなんですって。』

お客様『そうらしいよ。お店の開店準備中から列が出来てるんだってよ。     その上、夜間に営業を始めた店も何軒かあるってよ。』

築地は日々進化を続けているらしい。
お客様『私の取引先の仲買さんが、あんこう食べたんだって。
    あんこう売っている人がわざわざと思うんだけど・・・
    案の定、とても食えないって。でも回りの客達は、
    うまい、うまいって食ってるんだって。
    どうなってんだろうね。本物食ったことないのかねえ。』

場内の食堂は元々、ゴム長姿の場内で働く人や買い物カゴを手にした買出人が小腹を満たす店ばかりだったのが、 いつしか、おしゃれした女性やスーツ姿の男性が並ぶ名店ばかりになった観を呈している。 とくに寿司屋さんに行列だなんて。「てやんでえ、並んでまで食えるか」ってのが昔だったと思う。 二、三十分と居ないで、五、六個寿司をつまみ、銚子一、二本でさっさと席を立ったと思う。 長っ尻は野暮の骨頂だった筈だ。握りたてを間を置かず、さっさと口に放り込んだと思う。

瞬間勝負はてんぷら、そばだって同様だ。ひたすら食う、ハイさよなら。 築地の店は忙しい人達に合わせた、そんな店ばかりだったと思う。 だからどうなの、と言われそうだが、唯、私は様変わりが激しい築地にとまどうばかりだ。

昼飯時になり、ますます人通りもふえ、店の前の寿司屋さんにも人の列ができる。 そして出来上がった年配の男性三人が店から出てくるなり、路上に足を投げ出し大声で気勢を上げている。 こんな光景も日常茶飯事となった。いいのか悪いのか、私にも結論を出せないままでいる。今日は築地の報告という事で。

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