鰹節の伏高トップページ伏高コラム/レシピ築地の風景

黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2017 30

 築地は初夏の陽気。押し寄せる外国人は真夏の格好。肌の露出度を競っている。  

実は先週、日本橋の伏高のお客様が来店。私に「ゴールデンウイークは、何処へ取材に行ったの?」と訊かれ、「武蔵小金井の江戸東京たてもの園に」。「毎回取材大変だね」と気遣ってもらう。「うちは、迎賓館に行って来たよ」。赤坂離宮は去年四月から、一般公開が始まったのだが、手続きが面倒な上、大混雑と訊いていたので、諦めていた。「平日の朝なら、事前予約なしに入場できるよ」。早速、迎賓館のホームページでチェックする。あじゃーまー!!、市場の休みの水曜日は、すべて休館日だった。という事で。この日曜日、開館十時の一時間前到着を目指して自宅から銀座へ。

地下鉄丸ノ内線で四谷駅下車。赤坂口一番出口を出て、新宿通りを左折。すぐまた左折すると前方に、深い緑に包まれた広大な空間が。迎賓館と書かれたプラカードを持った係員が誘導してくれる。正面に白く華麗に装飾された鉄製門扉が現れる。その脇左右に同じ意匠の鉄柵がどもまでも。右手西門に続く道に、長蛇の列。十時公開は五百人限定なのだが、すでに数百人はいる。年配者、女性が多い。

鉄柵の隙間から、遙か彼方に威風堂々の宮殿が見える。やっと列が動き始めた。西門から入場して、手荷物検査場へ。その前のテントの下に何重にも重なる人の列。ここからが長い。やっと手荷物検査を間近に見える所へ。係員が「小銭入れ、携帯、スマホ、時計等は手持ちのカバンの中へ、飲み物は、警備員の前で一口飲んでください」と連呼する。なるほど、皆さん飲んでいる。手荷物を渡し、金属探知機をくぐる。その先の券売機に一人千円を差し込む。本館入場。すぐさま「壁に触らないでください。カーテンも窓もです。触っていいのは階段の手摺りだけです」。まあ建物全部が国宝なのだから、厳重なのも当然なんですけど。もちろん、本館内写真撮影禁止。

天井も壁も乳白色一色。そこに金箔でトリミング。絨毯はふわふわ。摺り足は憚られる。締め切ったいくつもの部屋の前の通路を過ぎ、玄関ホールへ。そこから、二階へ続く中央階段を見上げる。大理石の床、壁も柱も大理石だらけ。その上に敷かれた赤絨毯。二階の欄干の上の八基の黄金の大燭台の光が眩い。うちのやつ、「まるで、ベルサイユのバラの世界みたい」。確かに、こんな所が日本にあるとは。

ここから、彩鸞(さいらん)の間、花鳥の間、羽衣の間、朝日の間を巡る。それぞれ、何とか様式とか説明されるが、ちんぷんかんぷん。ただただ豪華絢爛。隅々まで金箔細工を施してあり、目がチカチカ。唯一落ち着けたのは、花鳥の間。国産の暗褐色の材木で腰張りされ、天井には花卉鳥獣の油絵、壁面に飾られた数十枚の七宝の花鳥画が秀逸。明治期の日本工芸の傑作。和のテイストが溢れている。この部屋のシャンデリアが一番大きかった。

一時間半ほどの本館見学を終え、裏の主庭へ。歩きづらい砂利道を進み、大噴水へ。勢いよく吹き出す水しぶき。こんな暑い日には、ほっとする。噴水の向こうの本館をバックに写メする人達。「ルーブル宮殿前で撮った写真よ」とでも自慢するのか。前庭に出て、改めて離宮正面を見上げる。がっしりとした白き花崗岩の二階建てだが、四、五階建ての様な高さ。両翼を手前に拡げ、人々を抱き迎える様な形。屋根の緑青が美しい。正門まで二百メートルの石畳のアプローチを歩き、さよならする。

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