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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2016 22

明けましておめでとう御座居ます。今年も皆様にとって良い年でありますようにお祈り申し上げます。  

築地市場での最後の年の瀬も、なんとか無事終了した。今年の十一月七日には豊洲市場が開場となる。移転まで一年を切ったのだ。毎年、暮れになると必ずいらっしゃる一般家庭のお客様達、口を揃えて「豊洲に行っちゃうの?」と仰る。「いいえ」と答えると、「本当!!良かった、あんなところまでゆけないモノ」。嬉しいじゃありませんか、そこまで心配していただけるとは。

今年の正月は春のような暖かさ。では人気の初日の出スポットの葛西臨海公園に行こうと思ったが、飲み過ぎで寝過ごす。のこのこ起き出してカーテンを開けると、薄明かりの中で、晴海大橋の中程に大勢の人が立ち止まっている。何事かと思っていると、空が一段と明るくなり豊洲の高層ビル群から太陽が顔を出す。初日の出だぞ!!と二人して手を合わせる。なんという幸運。幸先がいいったらない。

正月二日目は自宅で飲みつぶれ、ひたすら爆睡。三日目、初詣にいざ行かん。比較的、参拝者の少ないとネットに書かれていた芝増上寺へ。大江戸線大門で降り参道を進む。本当に寺に向かう人少ない。三門をくぐり大殿本堂へ。すんなり参拝を終える。「破魔矢を買って」とうちのやつ。販売所内を探すが見つからない。やっと奥に「守護矢」とかかれてある、神社とは違うのか? 

その時、突然思い出した、増上寺にお宝がある事を。地下の宝物展示室へ。薄暗い館内。次の部屋に進むとありました。「台徳院(二代秀忠公)霊廟模型」。かつて増上寺にあった実物の霊廟は昭和二十年の空襲で焼失(増上寺の大部分も)。昭和十年のロンドンで開催された日英博覧会に東京市がこの十分の一のスケールの模型を出品。その後、英国王室へ贈呈された。ロイヤルコレクションの倉庫で百年眠っていたこの宝が、最近発見された。宝の持ち腐れと日本に里帰り。完全修復され、往時のの輝きを取り戻した。東京に日光東照宮級の華麗な建築物があったのだ。小一時間うっとりと魅了された。

近くの愛宕神社は人混みと石段の急勾配を見て、こりゃ無理だとスルー。大門駅に戻り、大江戸線で上野へ。東京国立博物館へ。「博物館に初もうで」をやってる。特別展の「始皇帝と大兵馬俑」は先月鑑賞済み。総合文化展のみだと六百二十円。お目当ては、正月特別公開の長谷川等伯の「松竹図屏風」。何度見ても等伯のこの水墨画は見応え満点。あれも見なくちゃと、一階の仏像コーナーへ。国宝「普賢菩薩騎象像」。気品と優美に引き込まれ思わず合掌したくなった時、係員が飛んで来た。「館内は長い棒は持ち込み不可なんですけど」と、うちのやつの持つ守護矢に黄色いひもを巻く。イエローカードだ。恥ずかしくてとっとと外へ。庭では獅子舞やってました。とほほ。 

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