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黒川 春男

築地の風景

by 築地本店店長、黒川春男

2014 18

先月最後の水曜日は市場は休みだった。いつもなら午前二時頃には起床しているのに、目が覚めると五時だった。「やばい、もう始まってる」。この時間は熟睡してる筈のうちのやつ、すでにサッカーWCを観戦。日本サッカーは、今朝が運命の試合なのだ。  

案の定、コロンビアは先発選手を八人も入れ替えてきた。すでに、グループリーグCを突破してるから、やる気はない、とサッカー通が言ってた。しめしめ。にも拘わらず、前半十七分にPKを決められ、先取点はコロンビア。嫌な予感。そわそわ落ち着かない。

毎朝の日課である猫達の魚を焼き始める。猫トイレの掃除が終わったその時、。ワーッと小さな拍手。岡崎君がクロスをヘディングして同点に。声を殺して万歳を叫ぶ。「しまった、魚、焦がしちゃった」。ここで前日仕入れた、上等の白ワインを取り出す。「朝から飲むの?」とにらまれる。「乾杯の用意してんの」。「勝つって決まった訳じゃないんだから」。後半戦になって登場したコロンビアの若造に圧倒され、あれよあれよと失点を重ね敗退する。「なにが乾杯よ、別の意味の完敗じゃない!!」。かくして決勝トーナメント進出は夢の彼方へと消えた。祝杯はやけ酒となり、昼前まで寝込む。

「気分転換に、上野の台北故宮博物院展に行く?」。「今日は初日なんだから、見学どころじゃないわよ」とうちのやつ。実際、翌日、築地の本屋の奥さんが「友達が初日に行ったんだけど、とんでもない人の数で、近くで作品を見れなかった。特に、ひすいの原石から彫り上げた『翠玉白菜』だけを展示した部屋は、二時間待ちだった」と言っていた。何時になるやら、ゆっくり観れるのは。平日の雨の日を狙うしかない。

上野詣ではやめて、久し振りに台場へウォーキング。地盤整備がほぼ完了した豊洲の新市場を横目に進む。ゆりかもめの有明駅から国際展示場広場へ右折して、全長三百六十メートル、幅六十メートルの巨大な橋「夢の大橋」を渡る。だだっ広い豪華な橋ながら歩く人はほとんどいない。もったいない穴場。再びお台場に帰って来た実物大のガンダムを仰ぎ見てアクアシティお台場へ。お気に入りの「権八」さんへ。平日なので待ち時間なし。天ぷらせいろそばと天丼を注文。天丼にも、ミニそばが付く。うちのやつ、そっと「いつもより、そばもご飯も堅くない?」。「そう言われれば」。でも天ぷらは上等。二人共、寄る年波は勝てぬ。歯が衰えてきた。最後は離乳食となるのか、情けない。

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