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黒川 春男

築地の風景

 

 

 

by 築地本店店長、黒川春男

 

 

200818

 

あと何回。桜を愛でられるのかと思うだけで、桜がいとおしくなります。『願わくは 花の下にて春死なん そのきさらぎの 望月のころ』人生の折り返し地点をとうに過ぎ、終着地が見えてきた私には、西行のこの和歌が、いたく心にしみます。

 

と云うことで、いざ花見へ。さて何処へと思い巡らすものの、花見はやはり城を眺めてが最高なので、江戸城へ。千鳥ヶ淵は墓地があって、なんとなく嫌というつれの意見で、日比谷交差点を右折して、東御園に向かうが、しまった。金曜は休園でした。仕方なく平川門前でタクシーを降り、徒歩で北の丸公園へ。

 

人の波の後を追って坂道を登ると、前方に薄紅色一色の花明かりが浮かび上がる。お堀を縁取る桜が、高い石垣の上から堀の水面に届きそうな程、咲きこぼれ、風の吹く度に、しなる枝がまるで生き物の様に連綿と運動をくり返す。圧倒的な桜の世界にしばし呆然。ここで桜を愛でて一句といきたいところだが、眼の前で、団子をほおばるお年寄りの一団に、どうも気を取られる。「花より団子」モードにスイッチが入る。早い夕食にしようと退散。

 

田安門を潜って桜並木を下る途中で、つれが上野で口直ししようと言う。お花見の梯子も一興かなと、タクシーを拾う。池之端で降り、不忍池の真ん中を横切る中道を進む。桜並木が咲き誇っている。弁天堂のまわりは屋台が並び、ひどい渋滞。

 

やっとのことで、公園に入る。そこそこの人出だが、ブルーシートの上は、場所取りの人が寝そべってたり、箒で掃除したりと、上野公園名物の乱痴気騒ぎは始まっていなかった。まだ退社前の時刻なんだと、ちとがっかり。そこへ、雨がぱらぱらと降ってきた。小走りで、公園下の中華料理店に駆け込む。あんなに空腹だったのに、焼きそばとシュウマイが食べきれず、恨めしながら食べ残す。単品の量が多すぎる。

 

地下鉄に乗る前にデパ地下で買った、桜の花の塩漬けの乗った桜まんじゅうを、家で留守番していた愛猫にちょっぴり御裾分けするが、むごむごと鼻を動かすと、いらにゃあおと猫またぎしていった。猫には、花よりカリカリだった。

 

 

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