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舌の上にのせた瞬間

フルーツの香りが口中に広がった

 

 

日本蜜蜂のハチミツ

「 伏高さん、日本蜜蜂のハチミツなんかに興味ないですか? 」

 

今年の6月、キクラゲの勉強に熊本へ行きました。熊本産キクラゲを紹介してくれた乾椎茸の仕入先と一緒に行ったのですが、キクラゲ農家さんへの道すがら、椎茸屋さん、やおらハチミツの話を始めたのであります。

 

「 知り合いからの紹介があったもので、先週、藤枝

 (静岡県)の養蜂家さんと会った んですよ。 4年前

 に脱サラして、日本蜜蜂専門の養蜂家になった方な

 んですが、歳は60くらいだと思います。」

 

椎茸屋さん、さらに続けます。

 

「 まあ、最初は素人ですから、長野県のベテラン養蜂家に教えてもらいながら、

 巣箱1箱から始めたそうでして、今では120箱までに増えたそうです。

 

 だから、出来上がるハチミツの量 もそれなりに増えてきた訳ですが、

 いかんせん、売り先がな い。そこで、ウチと取引の百貨店 さんに卸して欲しい

 

 こんな話だったのですよ。

 

 何でも、市販のハチミツの大半は、明治時代に日本に持ち込まれた

 西洋蜜蜂が集めたハチミツなんだそうです。

 

 日本には古来から日本蜜蜂が生息しているんですが、

 『幻の蜜蜂』と言われ るほど少なくなってしまって、

 その日本蜜蜂が集めたハチミツは、本当に少ないらしいんです。

 

 私もサンプルをいただいて食べたんですが、これが、本当に旨いんですよ。

 

 味が濃いと言うか、コクがあると言うか。

 とにかく普通のハチミツと、明らかに味が違うのでビックリしました。

 

 値段は高いんですけど、それだけの価値はありますよ。

 

 稀少品だし、味の違いは誰にでも分かっていただけそうですから、

 百貨店さんに売りたい商品ではあるのですが・・・

 

 話を聞いたら年間で500本程度しか出来そうもないんですよ。

 

 もし百貨店さんに取り扱って貰っても、すぐに売り切れてしまって、

 『次回は来年の2月です』なんて状況になったら

 ウチが怒られてしまいますから、結局、取引はお断りしたんですよ。

 

 でもその時、伏高さんの事が頭に浮かびましてね。

 たしかに供給は不安定なんですが、伏高さんにはピッタリの商材だと思うんで、

 なんとか売っていただけないですかねぇー。

 

 実は学校の同級生の紹介なもんで・・・ 」

 

と、ハチミツの話が、突然、天から降ってきたのであります。

 

でも、甘いモノが苦手な私ですから、ハチミツについての知識はまったくありません。

 

いくら「日本蜜蜂のハチミツは希少です」と聞いてもピンとこない。

 

でも、日本古来のハチミツであれば、興味はあります。そこで

 

 

「 興味はあるけど、今すぐ商売になるかどうか・・・

 

 前にも話したけど、半年前から乾麺の蕎麦を探してるじゃないですか。

 できれば、 この秋は『きちんと蕎麦の味がする乾麺』を売りたいんですよ。

 今、2軒の製麺屋さんにお願いしてるんだけど、実は、満足できる麺が

 出来上がるかどうか、微妙なんですよ。

 

 だから、もし7月の中頃までにメドがつかなければ、ハチミツの見本を送って

 もらって、それで、おっしゃるように『市販のハチミツとまったく別物の味わいが

 する』 のであれば秋口から取り扱いますよ。こんな感じでどうでしょうか? 」

 

今年(2009年)の4月、『きちんと蕎麦の味がする乾麺作りプロジェクト』を公言し、ツテを頼って、現在(2009年7月)、2軒の製麺屋さんに乾麺作りお願いをしているのですが、大苦戦をしております。本来であれば、今年(2009年)の10月あたりに第一弾の乾麺を販売してお客様のご意見を伺いたかったのですが、残念ながら、私のイメージに近い試作品すら出来上がっておりません。そこで、急遽予定を変更しまして、日本蜜蜂のハチミツを取り扱うべく、見本を送っていただく事にしたのであります。

 

7月21日、藤枝からハチミツ300g入りが一瓶、宅配便で到着しました。早速に試食と言いたいところですが、私自身、もう20年、いや30年以上、ハチミツを口にしておりません。そんな人間に日本蜜蜂も西洋蜜蜂もありません。そこで、普段からハチミツを使っている弊店の事務員に試食をしてもらうことにしました。彼女は、千葉の養蜂家さんのハチミツを使っているのですが、価格からして西洋蜜蜂の集めたハチミツではないかと申しておりました。数日後、感想を聞くと・・・

 

「 いただいたハチミツ、ウチのと、全然、違います。すごく味が濃いんですよ。

 日本蜜蜂のハ チミツは、まったくの別物って感じです。

 

 やっぱり、ウチのは西洋蜜蜂だったんですね。 」

 

左はカナダ産、右は日本蜜蜂のハチミツ
左はカナダ産、右は日本蜜蜂のハチミツ

これはかなり有望です。早速、見本の残りを我が家に持ち帰り、試食であります。台所で、たまたまカナダ産のハチミツを発見。せっかくなので、食べ比べることに。先ずは見た目ですが、カナダ産の方が明らかに色がうすい。カナダ産は瓶の向こうが、何となく透けて見えますが、見本のハチミツは色が濃く、瓶の向こうは何も見えない。

 

さて、カナダ産のハチミツをスプーンですくって口に入れます。おそらく成人してから初めて、直接、口に入れるハチミツです。舌の上にのせると、確かにハチミツの味。平板な、あまーい味が広がります。辛党の私としては、一口で、もう結構。次に、日本蜜蜂のハチミツを口に入れると・・・

 

なんと、舌の上にのせた瞬間、フルーツの香りが口中に広がったのです。カナダ産とは大違い。そして、味の方はと申しますと、実にあっさりした甘さなのでございます。そして、その甘さの中に、若干の酸味すら感じるほど奥深い味わい。

 

ハチミツというより、果物の風味がしっかり残っている甘さ控えめのジャム、例えていえば、こんな感想が頭に浮かびました。甘いモノが苦手な私ですが、こんなハチミツならパンに塗って食べたいと思ったほどです。この時点で、日本蜜蜂のハチミツを販売する事を心に決めたのであります。

 

焼津・高草山の巣箱

さて、取り扱いを決めたからには、現地に行かねばなりません。養蜂家さん、静岡県は藤枝市在住ですが、最寄りの駅は焼津です。

 

駅で養蜂家さんと会うと、早速、巣箱が置いてある高草山に直行です。駅から車で15分も走ると、到着しました。

 

 

養蜂家 水野良行さん

鰹節の産地である焼津には、今までに30回以上も訪問していますが、焼津にも山があると、初めて実感した次第。

 

巣箱の中を見せていただきながら、色々と話を伺いました。

 

(1) 西洋蜜蜂は一種類の花の蜜を1度に大量に集めるので、「レンゲ蜜」や「アカシア蜜」などの「単花蜜」と呼ばれる一種類の蜜だけのハチミツになるのに対し、日本蜜蜂は年間を通じて様々な花から蜜を集めるので「百花蜜」と呼ばれる、さらっとした甘さの中に奥深い味わいがあるハチミツになる事

(2) 蜜蜂は巣箱の中で羽ばたいて集めた蜜の水分を飛ばすので、年に1度しか採取をしない日本蜜蜂のハチミツは、年に3~4回蜜を採取する西洋蜜蜂のハチミツに比べ、より濃縮されてコクがあるハチミツになる事

(3) 日本蜜蜂は西洋蜜蜂に比べ、体も小さい上に、行動範囲も狭いので、集める蜜の量が1/4程度になってしまうから、大変希少なハチミツである事

 

などなど、教えていただいたのであります。

 

 

日本蜜蜂のハチミツ

2009年秋、かくして日本蜜蜂のハチミツが新発売となったのでございます。

 

西洋蜜蜂のハチミツは、年に3回から4回も採蜜するのに対して、実は、日本蜜蜂のハチミツは、年に一度しか採蜜しません(日本蜜蜂の方が時間をかけてハチミツを集めるのです)。

 

毎年、10月から11月に採取し、3ヶ月程度熟成させてから瓶詰めして出荷するとのこと。その上、日本蜜蜂は気難しいので、育てにくく、ハチミツの絶対量が少ないのです。ですから、秋口には売れ切れてしまうことも、しばしば起こります。

 

供給が不安定で大変申し訳ございませんが、これが故に「幻」とまで呼ばれているのであります。機会がございましたら、ぜひ一度、日本古来のハチミツの味をお試しください。想像を超える新しい感動が味わえます。

 

築地仲卸 伏高 三代目店主 中野 克彦

 

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