「伏高さん、とうとう一本釣船が3隻になっちゃいました。
これだけ油代(燃料代)が高くなった割には
魚価が低迷してるじゃないですか。
これから先、(一本釣船は)減る事はあっても、増える事は
絶対に、ないでしょうね」
と、枕崎の久保さん(私が期待する若手製造家)から聞いたのは確か二年前の事だった。
鰹節加工用の鰹を獲る一本釣船が減り続けている事は知っておりましたが、
たったの3隻と聞くと、やはり愕然とする。
そこで、さらに
「ところで近海はどうなの?」と聞くと
「宮崎船がそこそこ漁をしてますが、40トンクラスの小さな船なんで
家内工業みたいなもんですから・・・これも減る一方じゃないっすか。
第一、漁師も(高く売れる)鮮魚向けに売りたいから
枕崎に水揚げされる量は減る一方ですよ。
まあ、削節の原料に、近海や一本釣の鰹節が使えなくなるのも
時間の問題ですよ」
と暗い声で答えてくれました。
鰹節に加工される鰹は(1)近海、(2)一本釣、(3)巻網に分類されます。
近海は日本近海で一本釣され生の状態で水揚げされる鰹。
一本釣は南太平洋で一本釣そして冷凍されて日本まで運ばれる鰹。
巻網は南太平洋で一度に50〜100トンまとまって網にかかり
冷凍され日本に運ばれる鰹であります(詳しくはこちらをご覧ください)。
品質は、当然、【 近海 > 一本釣 > 巻網 】の順番になる。
ですから、弊店ではランクの高い削節は、
長年、近海や一本釣の鰹から作った鰹節を原料としておりました。
通販の商品でいえば『近海荒仕上節の削節』や『一本釣鰹荒節の削節』などです。
ここで久保さんの話に戻るのですが、
残念ながら、近海や一本釣だけを使い続けることが、そろそろ現実的ではなくなってきた。
何たって、産地への水揚げが減っているのですからお手上げです。
近海や一本釣を商品名に掲げておいて、
説明文には「近海もしくは巻網の鰹から・・・」なんて書くのは、やっぱりヘンです。
そこで、今年(2007年)の11月のカタログ改編を期に、
「近海」と「一本釣」の看板を降ろす、
要するに、商品名を変更する事にしたのであります。
実は、今年の秋に看板を降ろす事を決意したのは、昨年の9月でした。
案の定、昨年の秋から、近海の鰹は殆ど枕崎に水揚げされず
一本釣の鰹の多くは仕上節(本節や亀節)の加工用に高値で取引され
とても削節原料に加工される状況ではありません。
その上、今年の春先から、巻網鰹の価格が大暴騰。
3ヶ月で2倍近くになったのですから鰹節業界は大騒ぎです。
巻網の鰹節でさえ、確保することが困難な状況になってしまった。
このあたりは新聞でも報道されたのでご存じかもしれませんが
BSEや鳥インフルエンザの影響による欧米における
ツナ缶の大幅な需要増が大暴騰の原因です。
正直な話、近海だ一本釣だと、悠長な事を言ってられない程、今の鰹節業界は混乱している。
このままでは、桜の花が咲く頃には
弊店の近海や一本釣の在庫がなくなってしまうのが現実であります。
このような状況でございますので、11月20日以降の発送分については、
(1)『近海鰹荒仕上節の削節』 →→→ 『鰹荒仕上節の削節』
(2)『一本釣鰹荒節の削節』 →→→ 『かつお荒節の削節』
(3)『一本釣鮪荒節の削節』 →→→ 『まぐろ荒節の削節』
それぞれ名称を変更させていただきます。
実際に使用する原料ですが、年内は今までと同様、旧商品名の通り、近海または一本釣を100%使う予定ですが、年明けから、徐々に巻網で作った鰹節も混ぜて削ってまいります。
沖模様が変わり、採算に合う価格で手に入る時は、近海または一本釣の原料を削るつもりではおりますが、将来的には、削節の原料は巻網の鰹節が主体とならざるを得ません。
なお、薩摩型本節や薩摩亀節(自分で削る節)については、最後の最後まで、近海または一本釣の鰹を使うべく、仕入れ努力を続ける覚悟です。
年明け、削節の品質は落ちるのですか?
当然のご質問です。
巻網の鰹も使いますので、「今までと全く同じ」と言ったらウソになります。
しかし、幸いにして、ここ数年、巻網の鰹の鮮度も良くなってまいりました。近海や一本釣に準じる高鮮度の巻網鰹だけを選び、より丁寧に削節原料を製造することで、品質の低下を最小限に留めるよう努力します。
このあたりは製造家と弊店の腕の見せ所。自信はあります。
年明けに、まずは、削節をご賞味いただき、評価をお聞かせいただきたく存じます。
高くなってもいいから、近海や一本釣を使って欲しいのですが・・・
ごもっともとなご意見です。
鮮魚用の鰹を使えば、今と変わらない削節をお届け出来ますから。
できる事なら私もそうしたいのですが、モノには限度があります。
例えば、9月4日の築地市場での近海鰹のセリ値は¥500/Kg。仮にこの鰹を仕入れて鰹節に加工して『近海鰹荒仕上節の削節』を製造したら、販売価格はいくらになると思われますか?
ざっと計算すると、300gパックが¥3,045。現状の2倍以上になってしまう。
果たしてこの価格でも、お客様に支持して頂けるでしょうか?
正直な話、自信がない。
そこで、「巻網の鰹を使っても遜色のない品質の削節」を作るべく
努力することに決めたのであります。
時代にマッチしない「絶滅に瀕している食材」を扱っている弊店ですので
これから先も、原料事情などの変化により、今回同様の事態が起こる可能性も充分にございます。
手前共は、所詮、ちっぽけな商人。
とても自然や世の中の変化には勝てません。
それでも、与えられた環境の中、最善をつくし、可能な限り『真っ当な食材』をお届けすべく、努力をいたしますので、今後ともご愛顧の程、宜しくお願い申し上げます。
築地仲卸 伏高 三代目店主 |